Firebender: ついに登場したIntelliJプラグイン版コーディングエージェント
迷えるJetBrainsユーザー向けの朗報、VSCode偏重だったコーディングエージェント界に一石を投じる。
Firebenderとは
FirebenderはAndroid Studio向けのAIコーディングアシスタント。Y Combinatorから出資を受けたスタートアップで、KevinとAmanの二人を中心に開発されている。
コード補完、チャット、エージェントによる自律的なコーディングタスクの機能を持っている。2024年のリリース当初は「Android Studioに特化したGitHub Copilotより高速なコード補完」として開発されていたが、2025年になってCursorやCopilot Editsのようなエージェント機能を搭載してアップデートされた。
IntelliJプラグインとして提供されているので、Android Studio以外のJetBrains IDEでもインストールできる。筆者はIntelliJ IDEAにもインストールして動作することを確認した。わざわざ「Android Studio向け」としているのは、ユーザーの多い環境にフォーカスするためではなかろうか。
デモ
IntelliJ IDEAでKotlinのコマンドラインツールのプロジェクトを作成した。
まずは既存のHello WorldをFirebenderチャットウィンドウ経由の指示でFizzBuzzに書き換えてもらう。

次に、複数段階の処理やコマンド実行ができるかを試す。FizzBuzzを関数に切り出すリファクタリングを行い、テストコードを記述し、Gradleで実行して成功することを確認してもらう。


このような単純なフローなら何もつまづくことなく実施できた。
さらに、創業者Kevinの動画チャンネルではより高度なデバッグを披露しているので確認してほしい。ここでは、Jetchatという定番のJetpack Composeのサンプルチャットアプリの動作を修正している。
背景
少し前提に立ち返って、なぜこれが待望されていたのかという背景を説明する。
コード補完やチャット機能は、既にIntelliJ向けのGitHub Copilotプラグインで実装されているが、Copilot Editsによるエージェント機能はまだ搭載されていない。なんせVSCode版のGitHub Copilotでもこの機能はプレビュー段階に留まっており、GitHub側では優先度が低いのだろう。
しかし、2024-2025年にかけて、世の中は空前のコーディングエージェントブームを迎えている。開発者たちは「vibe coding」に舌鼓を打ったり、魂が震えるような体験を求めている。

だが、これらのツールはどれもVSCodeをベースにしたものばかりで、JetBrains IDE系にはまだ上陸していない。
そのため、JetBrainsユーザーからは、CursorやClineのような開発体験を提供するプラグインが強く望まれていた。Android StudioもIntelliJベースなので、同じ事情が当てはまる。ついでに言うと、VimやNeoVimのユーザーたちも、同等のツールを欲しがっているようだ。
さらに、コミュニティの特性として、サーバーサイドのJava、Scala、Kotlinの開発者たちはVSCodeユーザーが少ない傾向にある。MicrosoftやVSCode側からのサポートも手薄だし、JetBrainsから見ればVSCodeは競合製品なので、これらの言語に対するVSCode側への支援もほとんど期待できない。
そこに至って、Firebenderの登場は大いに歓迎すべきものだろう。
プロジェクトのステータス
とはいえFirebenderはプロジェクトとしてはまだ初期段階にある。
謎めいた挙動をする部分も多く、例えば現状最初にメールアドレスを入力するだけで最新のGPT 4.5やClaude 3.7モデルが無料で利用できる。普通に考えると会社のキャッシュを燃やしている。一定以上使うと制限がかかるのかもしれない。
ビジネスプランもまだ不透明だ。ランディングページ(LP)を見ると、無料プランとエンタープライズプランが明記されているが、エージェント系の機能についてはまだ詳細が書かれていない。
セキュリティについては入力したメッセージやソースコードは一度Firebenderのサーバーに送信されるという。プライバシポリシーには「受信したデータを保存せず、すぐに破棄する」と記載されている。これは一般的なコーディングツールと同じレベルのポリシーではあるが機密情報を含むコードベースではまだ利用はしない方がいいだろう。
今後の展開としては、このままFirebenderが成長して普及するのか、Copilot Editsが安定してIntelliJプラグイン版にも対応するのか、あるいはJetBrains製の公式エージェントが大逆転するのか、が楽しみなところだ。
以下はエージェント機能リリース時の創業者Kevinの投稿で。ロードマップが端的に説明されている。
Future of Android Development will be multi-agents that code, fix bugs, implement UI changes from figma all autonomously. Firebender 0.9.6 proves this, and here’s why: pic.twitter.com/Xw6ROrXA0O
— Kevin 👊🔥 (@kevo1ution) March 3, 2025
スレッド要約:未来のAndroid開発は、コード作成、バグ修正、FigmaデザインからのUI実装を自律的に行うマルチエージェントシステムによって実現され、Firebender 0.9.6がその可能性を証明しています。このエージェントは過去1週間で100万行以上の承認済みコードを書き、1日あたりユーザーごとに約800行のコードを作成しました。今後6か月で、Android Studioとの統合を強化し、Composeプレビューの再レンダリングを直接利用する機能を改善するほか、複数のエージェントが並行して作業しながらエンジニアのフローを維持するマルチエージェント問題の解決を目指します。この新しい領域でフィードバックをくれたAndroidエンジニア全員に感謝し、まだ初期段階ではありますが、無料で試せるのでぜひ体験してほしいです。