Cursorの価格設定変更の騒動について
2025年6月にCursorは価格体系を大幅に変更し、月額20ドルのProプランを「リクエスト数制限」から「トークン使用量制限」へと切り替え、さらに月額200ドルのUltraプランを新設しました。

Cursorの説明によると、以前は月500リクエストまでの制限で、リクエストごとのトークン使用量は考慮されていませんでした。新しい料金モデルは1回のリクエストで消費するトークン数が大幅に異なるため、単純なリクエスト数制限ではコストを正確に反映できなくなりました。そのため、CursorはAPIベースのトークン使用量課金に移行し、Proプランには月20ドル分のトークンクレジットを含み、それを超えた分は追加課金となる形にしました。
まずいことにCursorはこの変更をポジティブに伝えるためか当初「Proプランでリクエスト数が無制限に使える」とPRしていました。これは「(トークン制限の範囲で)Autoが無制限に使える」を指すものですがのちに訂正されたようです。
Hummmmmmmmmmm@cursor_ai went from
— Aaditya (@aaditya_fr) July 4, 2025
"Unlimited" -> "Extended"
What does extend mean my boi? pic.twitter.com/4mH72kd1vw
この変更は多くのユーザーにとって分かりにくく、特に「無制限」と思っていた利用が実際にはトークン使用量に基づく制限付きだったため、予想外の請求が発生するユーザーの報告が多発しました。また、Pro Plusプラン(月60ドル相当)が公式の価格ページから消えたことや、価格体系の頻繁な変更も混乱を招きました。

Cursorはこれを受けて、6月16日から7月4日までの間に予期せぬ料金が発生したユーザーに対して全額返金を約束しています。

元を辿ればつまりCursorは「Claude 4 OpusやSonnetにばかりユーザーの利用が偏るのは自社のコスト管理上で好ましくない」と思っているということです。実際、少し前からCursorはモデルの選択を「Auto」をデフォルトにして軽微なタスクを安いモデルに振り分けるような試作をしていました。

この状況はすでにCursorを見かぎりClaude Codeに移行したユーザーたちからは冷ややかな目で見られており時にはFUDの対象にされていますが、Anthropicの現在のMaxプランで利用できるトークンキャパシティがはたして適切かというのも怪しいところです。くわえてAnthropic自身もモデル開発のレイヤーでOpenAIやマイクロソフトと競争し、AWSやGoogleとの資本を含むパートナーシップもあります。
Simon Willisonはコーディングアシスタントの分野全体で価格競争のフェーズが1つ進んだ可能性に言及しています。
これまでは業界の投資に支えられた低価格競争の時代でしたが、これからは持続的な原価率を前提として顧客を囲い込むという新たな価格設定の傾向に移り変わっていくのかもしれません。個人向けはDevinのようにコンピューティングクレジット方式を中間に置くのか、ネット回線契約のように従量課金で多様化していくのか、パブリッククラウドの普及期を思い出させます。