伊坂幸太郎『ラッシュライフ』

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
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ラストに物凄い馬鹿オチや、DawnDen返しを期待してしまうのはミステリ脳か、いやメフィスト脳か。意外に、というか当然のごとくキレイにエッシャーの騙し絵に集約された、バラバラ死体ととことかうますぎ。読後感もよくて、もうどうしようもないと思われた赤帽の青年とかリストラ男とかも救われる。チュンソフトサウンドノベル『街』とか好きな人に良さそうだな。各ルートの登場人物が微妙に影響し合っている。キーワードとしてさり気なく自著も絡ませてくる。多少感じる物語の本質的なところのモヤモヤというか違和感「え、それでいいの」という感情も全部取っ払うぐらいのパワーがあってよさげだ。伊坂isパワーキャラ。
登場人物が皆魅力的との評が多いけど。美学を持った泥棒とか、職を失って途方に暮れる中年男とか、この人はおっさんキャラを書くのが一番うまい。萌える。伊坂には作家萌えさせるナニかがある。
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ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)