綿矢りさ『蹴りたい背中』


長谷川初実(ハツ)は、陸上部に所属する高校1年生。気の合う者同士でグループを作りお互いに馴染もうとするクラスメートたちに、初実は溶け込むことができないでいた。そんな彼女が、同じくクラスの余り者である、にな川と出会う。彼は、自分が読んでいるファッション雑誌のモデルに、初実が会ったことがあるという話に強い関心を寄せる。にな川の自宅で、初実は中学校時代に奇妙な出会いをした女性がオリチャンという人気モデルであることを知る。にな川はオリチャンにまつわる情報を収集する熱狂的なオリチャンファンであった。
久々にみんなと同じ本を読んだ感じ。素直に面白かった。というか、「何とか館で実行不可能な密室殺人が――」とか「連続殺人発生!内臓をズルズル引き出された惨殺死体が――」とかのどうしようもないものを主に読んでいる俺のようなヤツがこの作品を面白いと思えるのが面白い。だって、この作品をミステリ脳で考えると「背中をバールのようなものでズタズタにされた惨殺死体!犯行現場は離れの密室!そして次々と起こる連続殺人!この難事件に女子高生探偵・ハツが挑む!」のようにしかならない。

年下の作家の作品を読んだのは初めてかも知れない(ついでに今気付いたけどオンナの作家を読むのも初めてかも知れない)。でも年齢は関係ないな――ちょっと読む前なんかは、おめーどこ中だよ*1とか粋がっていたけど。最初のページから良いです。「キーワードで繋がる面白フェイス」?「オープンソースのコンテンツ化」?――ハッ、っていうこのスタンス。

芥川賞受賞作で話題にもなったけど、著者近影に使われてる写真が売り上げ貢献度に大きく働いたのではないのか。紛う事なき声優ヅラ、ZARDヅラであります。この写真だけなんだけど。ネット上でも話題になっていたけど、リンク集の類はほぼノットファウンド。情報の流れは速いなぁ。

現代作家ガイド―綿矢りさ」で「似ている作家」の欄に佐藤友哉が……なんだかファンに怒られるのではないかと意味もなくドギマギ。
【3】

蹴りたい背中

蹴りたい背中

*1:あ西中?じゃあヤマザキ先輩いるっしょ?そう、下平川のローソンの隣の床屋の。ウチの兄貴があの人とダチだから――