西尾維新「クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い」

クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い
西尾 維新
ASIN:4061822330

西尾氏、イチ押し。――清涼院流水
絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢が“科学・絵画・料理・占術・工学”、5人の「天才」女性を招待した瞬間、“孤島×密室×首なし死体”の連鎖がスタートする!
工学の天才美少女、「青色サヴァン」こと玖渚友(くなぎさとも)(♀)とその冴えない友人、「戯言遣い(ざれごとづかい)」いーちゃん(♂)は、「天才」の凶行を“証明終了(QED)”できるのか?
新青春エンタの傑作、ここに誕生!第23回メフィスト賞受賞作。
理不尽な《首斬り》の横行する馘首(リストラ)時代。絶海の孤島に集められた世界的VIPの天才レディ×5と、お供達(フレンズ)。貴婦人の《首斬り》殺人が連続する。そのサイクルは?オーソドックスな本格ミステリのようで、様式美(パターン)を信仰して疑わない作家ロボットにはゼッタイ創れない物語。とっくに新時代は始まっている、と、今更ながら確信。新世紀のイメージ維新志士が、メフィスト賞から最前線に出陣。いーちゃん、いいじゃん。西尾氏、イチ押し。―――(清涼院流水
出版社/著者からの内容紹介

近所の書店ではミニコーナーが出来ててこの作家の作品がずらーっと面陳されてるから「そんなにおもしろいんか?」とおもってデビュー作を読んでみた。全体的に軽い、読みやすいから若い人にお薦めだろう。
で感想。面白かったのかつまんなかったのか微妙なところだけどもサクサク読み進めたってことはつまんなくはなかったんだろう。でもこの一連のシリーズを読み進めたいとは思えなかったからまぁそういうことなんだろう。とこの物語の語り部こと"戯言使い"もこんなカンジのはっきりしないことを言うのだろう。
キャラの書き分けに"○○の分野の天才"と使っていて頭に入ってきやすい(スタンドみたいなもん)*1があまり好きではない、それはまぁツカミみたいなものか。それにぼくの思う18禁ADV的な会話が所々に出てくるし。どうも、このPOPでアニメチックなイラストのせいで色眼鏡で見てしまうけどこの話は世に"天才"と呼ばれる人たちのひん曲りっぷりがよく書けてるんじゃないか。著者の後書きを見てもこの「天才てなんなん?」ってとこが書きたかったんだと思う。
さて、この作品は青春エンタと名打ってるけど本筋はミステリーで進んでいく。事件自体は名探偵コナン的な非常に軽いノリの殺人事件なんだけれどもどうもこの作者は"ドンデン"*2が好きなようである。事件の解決部分のドンデンは許容範囲内だったがエピローグ部分にまでひと山用意してある、あれはいけません。ドンデンするなら読者を驚かせてくれなきゃつまんない。「サンセット大通り」や「シックスセンス」、「猿の惑星」のように「騙されたぁー」感がない、この作品のそれでは「はぁ、そうですか…」となんだか突き放された気分になってしまった。ドンデンするだけの情報提示がされてないだとか、ここは後の物語でも出てくるだろう「人類最強の請負人」とか言う人物のインパクトを出すための"おまけ"をして使われたと邪推してもしょうがない。個人的にはやっぱりあのドンデンはいらなかった。ちなみにぼくの浅い読書歴の中で一番騙されたと思ったのは昔読んだ我孫子武丸の「殺戮にいたる病」(多少美化してるかも?)。

*1:【スタンド】ジョジョの奇妙な冒険

*2:【ドンデン】どんでん返し。物語を核をひっくり返すような大オチ