SABU監督「幸福の鐘」


幸福の鐘 デラックス版
ASIN:B0002B5A1Q

内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより)
『DRIVE』のSABU監督が寺島進を主演に迎えて贈るロードムービー。勤めていた工場の閉鎖により、突然職を失った男・五十嵐悟。作業服のままあてもなく歩き出した彼は、行く先々でさまざまな人間と出会い、そして思いも寄らない事件に遭遇していく。

僕はSABU監督を「殺し屋1」で役者として知り、監督もやっているとのことだったので「弾丸ランナー」「DRIVE」「MONDAY」「ハードラックヒーロー」を一応見たのだがこの作品はとんだ食わせ物、今までのどの作品とも毛色の違う異色作であった。
何よりも目がいったのは「主演:寺島進」の魅力と主人公がラストまで一言もしゃべらないということ、セリフを極端に省いただけでもなく音楽にわたっても町の雑踏や自然の音をそのまま撮り極力BGMに頼らず美しい映像のみで感傷的に演出していたし、余計な情報をあえてシャットアウト、伏線らしい伏線も削り、主人公への感情移入を計ることで観客自身に「本当の幸せとは何なのか」という、いわばおとぎ話的な教訓をこの映画は提示していた。
また物語終盤、歩き着くところまで歩いた主人公が今まで歩いてきた道のりを逆走していく所の背景の取り方が絶妙。上りだった電車は下りへ、店から飛び出していった万引き少年は反対方向へ、おそらく主人公は行く着くところまで行き着いた時にこの映画のテーマである「本当の幸せ」に気づいたのだろう。ゆえに最後はついに走り出したのだ。
SABU監督自身が最高の技術屋と最高の俳優をあつめて作り上げた意欲作、しかしながら娯楽を求めて映画を見るにはシンプル故にあまりにも退屈すぎる。個人的には「MONDAY」「弾丸ランナー」の方が好きだ。