ボブ氏に何が起こったのか

この問題を解く場合、まずボブ氏は何故女性従業員に「黒いバッグはあるか」と問い合わせをしたのかを考察せねばならない。参照先図をご覧の通り、店内は非常に開けた場所で、売場に商品の陳列も成されている。そして、並んでいるのはバッグのみ。容易にカバン売場、もしくは「カバン屋」であることは伺える。図の三点以外にも商品は並べられているのだろう。現に、女性従業員は問い合わせを受けた後、即答で返している。では、何故ボブ氏は自分で好みのものを探すことをせず女性従業員に問い合わせをしたのか。

仮説
ボブ氏はたくさんの黒いバッグの中でより良いものを購入したいと思っている

そう考えると、わざわざカバン売場まで来て「黒い」という要素だけで問い合わせをしているのに納得がいく。幾多ものバッグのうち、選りすぐったものを選択したいのだ。
しかし、即答で返した女性従業員の「小さくて、若い女の子の間で人気」という言葉を聞いた途端にボブ氏は購入を即決する。たくさんの黒いバッグのうちでより良いものを望んでいたボブ氏が、検討もせずに即決である。果たしてボブ氏に何が起こったのか。もしや「より良いもの選びたい」という希望は最初から存在しなかったのではないか――否、そうではない。

仮説
ボブ氏にとって「若い女の子の間で人気のバッグ」は、それほど重要だった

ボブ氏が購入を決めたのは、女性従業員の「若い女の子の間で人気」という言葉を聞いた後であった。要するに、ボブ氏にとって「若い女の子の間で人気」という事項は、それまでの「検討に検討を重ねてより良いバッグを選びたい」というものを退かせる程の超・優先事項になったのだ。そして考えを進めるに、若い女の子に人気のバッグを持ったところで、若い女の子に人気のボブ氏になるわけではない。ボブ氏にとっては、若い女の子と一緒のバッグを持つことによって、彼女らと同化することに意味があったのだ。それは、ボブ氏にとって何よりも優先されるべき事である。

結論
ボブ氏は若い女の子達に同化を計ることを生き甲斐としている