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関口現監督『SURVIVE STYLE5+』

関口現監督『SURVIVE STYLE5+』なんというか「CM界の巨匠が手がけた浅野忠信主演のスタイリッシュ・コメディー!」というだけで早くも危険な香りが漂ってくるのだ。それは実際、CM界の先人達がポカをやらかしてるからなのだけども、往々にして彼らの作品の数十秒に編集された「予告版」にはやたら期待させられる。公式サイトで見られるこの作品の予告もかなりぶっ飛んでていい感じだ。

ストーリーは、妻を殺したい男(浅野忠信)と殺しても×2何度も甦る妻、思いつくたびにネタをテープレコーダーに吹き込み悦に入っているCMプランナーの女(小泉今日子、その恋人の売れっ子催眠術師(阿部寛)に自分は鳥だという催眠をかけられた中年男(岸部一徳)とその家族、空き巣をして暮らしている奇妙な三人組(津田寛治・他)、海外からやってきた殺し屋(ビニー・ジョーンズ)とコーディネーター兼通訳の男(荒川良々)それぞれの話が何度も切り替わり、交わるようで交わらない物語が展開されていく。
注意しておきたいのは、ミステリ小説やナニかで見られる、群像劇から結末でそれぞれの物語が一気に集約されて読者に浄化を及ぼすタイプの作りをした物語ではなく、基本的にナンセンス進行の物語でそれぞれの登場人物が関わるにしてもかなり強引な展開になっているということ。本作はそこを楽しむモノでもなく、色彩やレイアウトに凝った美術や、監督・関口現×脚本・多田琢が手がける「DAKARA」や「BOSS」のCMのように映像センスや独特のユーモアを楽しむモノなのだろう。「妻を殺したい男」がなんで妻を殺したいのかの説明もなく、最初からそういうキャラとして配置されているし、2時間弱もある作品にしてはテンポが良いと感じる部分は、シーンの切り替わりが早いだけでありさして物語も展開しない。脚本原理主義者からしたら、それこそ激昂して腕を切り飛ばしてくるようなデキだろう。
いい役者を揃えたこともあって演技の部分では満足、浅野忠信はいつものぼそぼそしゃべりだったけど。その妻役・橋本麗香が台詞もなく真顔でたたずんでる様は「エクソシスト2のジャケット」を思わせて背筋がゾットした。また、岸辺一徳は鳥のまま生活する男を「ポゥッ、ポゥ」という台詞だけでまさに怪演していたし、阿部寛のウザさ・うさんくささ・奇妙なダンスは天下一品、『スナッチ』などのガイリッチー監督作品で知られる強面の殺し屋ビニー・ジョーンズは「おまえの役割はなんだ?」という口癖と主にキレ外人を演じていた。
そして、笑えるという意味では荒川良々(劇団・大人計画)演じる通訳がかなり良い。キレた殺し屋が叱咤する台詞を訳し、おどおどしながら相手を罵るのである。おまけに殺し屋が喋っていない台詞まで、適当なアドリブめいた珍言で罵り、何とか怒りを伝えようと暴走しだすので相当うけた。あと、小泉今日子が妄想しだす「新CM劇場」とか、奇妙な空き巣三人組のパートでホモ役の男がときめいて見つめてくるシーンに大音量で流れ出す岡村靖幸×石野卓球come baby』は最高の演出。
さて、割と個々で面白い・笑える箇所はあったが全体的にはCM制作者である監督・脚本家が思う「面白い映像」を継ぎ接ぎで組み合わせただけという印象で、少し物足りない。公式サイトのプロダクションノートのページに詳しく書いてあるが、この作品には監督・脚本家の親しい人が参加していたりや、業界屈指の才能を集めたと書いてあったりで、それを見て「内輪ノリ」みたいなものを感じた。劇中台詞にもあるように、各人の「役割」を考えて作ったら、もう少し面白くまとまったモノが出来たんじゃないだろうか。
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