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古処誠二『UNKNOWN』

メフィスト賞受賞作の中で評判がよい、一部で熱狂的指示を受けている、戦争物(?)しか書かない若い作家、といった前知識のみで読んでみました。まぁ評判通りの佳作、良作といった感じでしたね。あらすじは以下。


侵入不可能なはずの部屋の中に何故か盗聴器が仕掛けられた。密室の謎に挑むのは、防諜のエキスパート・防衛部調査班の朝香二尉。犯人の残した微かな痕跡から、朝香は事件の全容を描き出す。
語りは、プロ諜報員の朝香タン(男)ではなく、その補佐に付いた野上三曹の一人称視点で進みます。軍隊内の各肩書きの上下関係ぐらいは知っておいた方が良いかもしれない(読んでるうちに自然と頭に入りますが)ミステリ、探偵小説、推理小説、とかの細かい分類、種別はよくわからんのですが、本書はアイテムキーワード登場人物ぽんっぽんっのずらららー、さー解いてみろという種類ではなく、物語の流れの中に自然にトリックや犯人追及が入ってくるかんじで(なんていうんだろう)まー頭やわくして読めということだろう。「誰が、どうやって事件を起こしたのか」より「なぜ事件は起きたのか」が書きたいみたいだしね。
で「事件」は殺人が起きるというわけではなく、盗聴器が仕掛けられたという一見しょっぱいものなんですけど、本書の肝はあんまミステリ的なところにはなくて、舞台に自衛隊基地を選んだところとか、裏のメッセージ性みたいなものだろう(映画で言う『JSA』とかか?見たこと無いけど)。重く堅苦しい雰囲気になりがちながら、端正で軽い(読みやすい)文章でぐいぐい読み込ませてくれるところもポイント高い。特に終盤、事件解決からエピローグまでの「畳み掛け」は気持ちよく、読後爽やか。
俺はブラウン管を通しての、自衛隊に入隊した少女のドキュメンタリーとか、あるいはニュース・報道で映る、先入観満載の自衛隊内部しか知らなかったわけですけども、こう物語として文章化された日常を見るとなんだか考えさせられるものがありますね。花輪和一刑務所の中』とかにも通じる「のぞき見る感覚」があるのかもしれない、なんかリアルだ。いや作者の経歴は知らないけどこれで「入隊経験はありません」とか言われたら椅子からずり落ちるわ。うちに椅子はないけどな。
あと、朝香タンコーヒー飲み過ぎだろ、俺は紅茶飲料中毒だけど。ここら辺はなんかへのオマージュか、高級なギャグと受け止めた。

UNKNOWN (講談社ノベルス)

UNKNOWN (講談社ノベルス)