大地震の思い出とフラッシュバック

ある日僕が新宿歌舞伎町近辺におっ立っている雑居ビルに店を構える「MORE」というゲーセンに居た時のこと。非常に大きな揺れの地震が起こった。ざわざわとする店内。しかし、すぐ地震は収まり各々ゲーマー達は自分の持ち場へ戻っていく。
ちなみにそのゲーセンをもうちょっと説明しておくと、1階、2階にプリクラやUFOキャッチャー、大型筐体の音楽ゲームなどが配置されている"おしゃれゲーセンゾーン"。3階はアクション、パズル、スポーツゲームなどのビデオゲームが配置されている"一般ゲーマーゾーン"。そして、4階には新旧各種の2D格闘ゲームシューティングゲームなどが配置してあり、全国の格ゲーオタクの聖地とされている"廃人ゾーン"。僕の目的地は当然4階だ。(余談だがその上の階はゲーマーズ、その上は歯医者)
その地震の直後、僕の頭の中に嫌な予感がよぎる。数分後に大直下型の関東大震災が起こり、歌舞伎町、新宿三丁目、アルタなどが、全部ぶっ潰れる。山手線は止まり、都心の機能がすべて麻痺する。通りを見るとポン引きが落下した看板に突き刺さって転がっている。そんなおぼろげなイメージを脳内に見た僕はプレイしていた「ワールドヒーローズパーフェクト」を放り出してすぐモアを飛び出した。こんな閉鎖的な空間でゲームオタク達と一緒に死ぬのはまっぴらだ。
僕の予感は結構当る。結構と言っても数字にしたら0.0000000〜みたいなものだとは思うが。それにもしこの予感があたって大地震が起きて死んだとしたら、事前に予知できていたのが"もったいない"と思っていただろう(デジキャラットの看板が背中に突き刺さりながら)。
また余談に入るが僕には"過去の映像を鮮明にフラッシュバック"する特殊能力がある。(特殊能力かどうかは知らないけど)しかしこういうのは非常に印象的だった場面が見えるのが普通なんだが(漫画の殺人事件で推理の道具に使われるキャラとか)僕の場合は非常にどうでもいい映像がフラッシュバックする。中学生の僕が蛇口をひねる映像や、食卓のテーブルで母親に醤油をわたす映像、「花金データランド」のいちコーナーの映像。これはなんなのか、まぁそんなものは相応の医者に診てもらうとして新宿での話に戻る。
モアから出た僕はソワソワしながら安全な場所を求めて歩き回った。さぞかしその姿は挙動不審だったことだろう。西口ヨドバシカメラ近辺の横断歩道を行ったり来たり、東口前の中州でキョロキョロしたり、金曜にジャンプを早売りしているオタクショップを覗きに行ったり。
わけが分からなくなってきた。手持ちのNOKIA製の携帯電話で友人にメールを送ってみる「どうしよう」。しかし友人は冷静だった、血も涙もない男であった。「あほか」とだけ書かれたメールが返信されてきた。
僕は自動販売機で紅茶花伝を買うと東口かに道楽前の新宿スポーツランドへと入っていった。店内ではヴァーチャロンオタクがキャラの有利不利を語り、目の回りを白く塗った女達がプリクラに群がっていた。床では背広のはだけた酔っぱらいが横になって熟睡している。床にぶちまけられた吐瀉物が天井のライトやプライズゲームが放つ色とりどりの光にてらされて"キラキラ"と光っている。
そこには大地震もハルマゲドンも来なかった。

追記

麻薬中毒者による幻覚症状の再現
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え?